臨床工学科
「臨床工学技士」は厚生労働大臣の免許を受けて、医師の指示の下に、生命維持管理装置の操作及び保守点検行うことを業務とする医療機器の専門医療職です。臨床工学技士は他の医療職種と比較して歴史は浅く、1987年に制定されました。近年の医療機器の目覚ましい進歩に伴い、医学的知識と工学的知識の双方を有する専門技術者として、患者さんと医療機器との懸け橋となり、現代医療の重要な一翼を担っております。
業務内容
1 血管造影室業務
当院は血管造影室が2室あり、SIEMENS社製バイプレーン装置とPHILIPS社製シングルプレーン装置を有しています。臨床工学技士はどちらの装置とも医師と共に術野に立ち、清潔介助操作を行っております。装置の操作方法の異なる2社の装置のカテ台の操作やフレーミングを行っています。
PCI
a,カテーテルインターベンション関連業務
心臓カテーテル検査・PCI・EVT施行時の清潔野直接介助業務とポリグラフやIVUS、IABPやPCPSなどの補助循環の操作、カテ出しやコスト請求、データ管理などの外回り業務を行っています。患者さんに負担を少なくをモットーに、全例PCIスタンバイで行い、スピーディーで安全な手技をチーム全体で意識し協力しながら施行しています。
カテーテルアブレーション業務
b,カテーテルインターベンション関連業務
アブレーション業務は直接介助者1名と外回り1~2名で行っています。外回りはラボ、スティムレータ、3Dマッピング装置、アブレータ、クライオコンソール等の操作、コスト請求等を行っています。ラボシステムはBoston Scientific社製LABSYSTEM、3Dマッピング装置はBiosense Webster社製CARTO3を使用しています。特に進化の早い分野のため、メーカーさんの力も借りながら、積極的に勉強会に参加して新しい技術や知識を取り入れています。
植え込みデバイス
c,植込み型デバイス関連業務
ペースメーカやICD、CRTDなどのデバイス植込み術時は、清潔野直接介助業務とPSA操作、書類の作成、コスト請求などの外回り業務を行っています。また植込み後、患者さんへの説明や生活指導、外来や病棟でのデバイスチェックやMRI撮像時の対応、各社遠隔モニタリング管理も行っています。
d,心臓血管外科業務
血管造影室にて下肢の血栓除去術等を行う際、直接介助として手術室ナースと共に清潔野で対応しています。また、腹部・胸部ステントグラフト内挿術でも同様に治療に携わっています。
脳神経外科業務
e,脳神経外科業務
脳血管造影、CAS、脳動脈瘤塞栓術や脳血管形成術、緊急血栓回収術など脳血管内治療にも携わっています。清潔野では直接介助とカテ台の操作・フレーミングを行い、外回りはカテ出しとコスト請求を行っています。チームの一員としてスムーズに症例が進んでいくよう心掛けています。
2 手術室業務
人工心肺装置
当院は手術室3室を有しており、手術室での業務は心臓血管外科手術時が大部分で、他科の手術時は麻酔器や生体情報モニターなど機器のトラブル対処を行っております。
当院の心臓血管外科手術患者さんの特徴は、低心機能患者さんも多く、繊細な循環管理や患者管理が求められる場面も多くあります。またMICSも行っており、時代のニーズに対応した心臓手術も積極的に行い、チーム一丸となり治療にあたっております。
当院の人工心肺システムは次世代型システムの先駆けとなるシステムを開発・導入しており、安心・安全・安定的な体外循環を意識し、循環管理の新たな時代を意識した、またその時代を担っていく若手世代の教育も意識したシステム作りを心掛けています。
3 集中治療室関連業務
当院の集中治療室は、脳神経外科、心臓血管外科、循環器内科の患者さんがほとんどで、人工呼吸管理や補助循環管理、各種モニターの管理や血液浄化療法等を行っています。
4 血液浄化療法業務
入院中の血液透析(HD)を行っています。また術中・術後のCHDFやレオカーナ・トレミキシン・ビリルビン吸着等の各種吸着療法やCARTなども行っています。
5 医療機器中央管理業務
院内すべての医療機器を専用管理システムに登録・管理し、点検計画の立案や実施、修理の履歴など管理しています。また、メーカー講習会にも参加し、院内で修理できるものは修理することでコスト削減にも貢献しています。院内ラウンド行い、医療機器が安全に使用できているかなど看護部と協力しながら安全管理に取り組んでいます。古くなってきた医療機器も多々ありますが、安心して使用できる医療機器を提供できるよう日々心掛けています。
6 その他業務
在宅で使用しているCPAPやNPPVなどの遠隔モニタリング管理を行っています。多くの患者さんが使用しており、チェックするのも時間がかかりますが、日々コツコツ管理をしています。
臨床工学科の体制
当院の臨床工学科の教育の基本はOJTですが、早い段階から業務を経験・習得させることで、責任感ややりがい、仕事の楽しさを感じ、若手技士一人一人が率先して自己啓発を行いOff-JTへ参加するなど、互いに刺激し合いながら積極的に学び合える職場環境となっています。また、学会への参加や発表なども積極的に行い日々新しい知識を吸収しています。
業務体制は専属や専従、ローテーション等は行っておらず、歩みの異なる個々の業務スキルを見極めながら、日々の症例や業務内容に応じて柔軟に対応しています。すべての臨床工学技士がジェネラリストとして幅広く活躍できるよう日々精進しながら、毎朝のミーティングだけでなく、個別面談等も行い、自分が何の業務に興味を持ち、何が好きで、何を極めていきたいのか、など目標を明確にすることで、各々が各分野のスペシャリストを目指して進んでいける体制づくりを心掛け、最終的にジェネラルでスペシャルな臨床工学技士となれるようスタッフ一人一人が目標に向かって突き進んでいます。